THE不動産入札|資産承継ガイド
不動産の贈与
知っておくべき
注意点
2026年5月時点の税制・実務を踏まえ、物件所有者が知っておくべき贈与の注意点を、ケース別に整理します。
贈与の基本
贈与とは
財産を無償で渡し、相手が受け取る契約です。不動産の場合は、贈与契約だけでなく、所有権移転登記・税金・管理責任が発生します。
売買・相続・遺言・家族信託との違い
贈与は生前移転、相続は死亡後承継、売買は対価ありの移転、遺言は死亡後の分配指定、家族信託は管理と承継を設計する仕組みです。
暦年課税の注意点
年間110万円の基礎控除
1年間にもらった財産の合計額から110万円を控除します。ただし、110万円以内なら絶対安全という考えは危険です。
相続開始前贈与の7年加算
2024年以後の贈与について、相続税へ加算される期間が段階的に3年から7年へ延長されています。
延長された4年間部分の100万円控除
相続開始前4年超7年以内の贈与については、総額100万円まで相続財産への加算対象外とされます。
駆け込み贈与の危険性
認知症・病気・相続直前の贈与は、意思能力、遺留分、家族間の納得、名義実態の面で慎重な確認が必要です。
贈与税率
贈与税は、原則として「贈与財産の価額 − 基礎控除110万円」の課税価格に税率をかけ、控除額を差し引いて計算します。
一般税率
兄弟間、夫婦間、他人からの贈与、親から未成年の子への贈与など。
特例税率
18歳以上の子・孫が、父母・祖父母など直系尊属から受ける贈与。
相続時精算課税
対象者
原則として、60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与で選択できます。
年110万円の基礎控除
2024年以後、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が創設され、この基礎控除部分は原則として相続財産に加算されません。
2,500万円特別控除と20%課税
年110万円控除後、累計2,500万円までは特別控除。超える部分は原則として一律20%で贈与税を計算します。
一度選ぶと戻れない
同じ贈与者からの贈与について、暦年課税へ戻れません。不動産では評価額、将来値上がり、収益性、管理責任を慎重に確認します。
あらゆる贈与ケース別の注意点
親から子へ自宅を贈与
親の居住継続、生活資金、将来売却、施設入居資金、他の相続人の遺留分を確認します。
親から子へ収益不動産を贈与
賃料、敷金、賃貸借契約、修繕義務、管理責任、所得税申告の承継が重要です。
祖父母から孫へ贈与
世代飛ばし承継として有効な場合がありますが、親世代・兄弟姉妹間の不公平感に注意します。
夫婦間の居住用不動産贈与
婚姻期間20年以上など一定要件で配偶者控除を検討できます。ただし登記費用・取得税は別途確認が必要です。
住宅取得等資金の贈与
子や孫の住宅取得資金として金銭を贈与する場合、一定要件で非課税制度を検討できます。所得要件、住宅性能、入居期限、申告要件を確認します。
教育資金一括贈与
金融機関を通じる専用制度です。期限、使途、残額課税、受贈者年齢、領収書管理が重要です。
結婚・子育て資金贈与
制度の期限や見直しが続く分野です。形式的利用ではなく、実際の資金需要と証憑管理が必要です。
ローン・抵当権付き不動産の贈与
債務引受、金融機関承諾、負担付贈与、譲渡所得課税の問題が生じる場合があります。
共有持分の贈与
一見公平でも、売却・修繕・賃貸管理で意思決定が止まりやすく、将来の紛争要因になります。
底地・借地権の贈与
権利関係、地代、契約内容、更新料、譲渡承諾、評価方法を確認する必要があります。
農地の贈与
農地法の許可・届出、営農実態、後継者要件、納税猶予の可否を確認します。
空き家の贈与
管理不全、解体費、固定資産税、近隣対応、将来売却、相続登記との比較が必要です。
法人所有不動産・非上場株式の承継
不動産そのものではなく株式承継になる場合があります。株価評価、役員構成、事業承継税制を確認します。
死亡年の贈与
贈与者が贈与した年に死亡した場合、贈与税ではなく相続税側で扱うケースがあります。
認知症前の駆け込み贈与
意思能力、本人の真意、他相続人の納得、財産管理実態を確認しないと、後日無効・紛争化する恐れがあります。
名義だけ変える贈与
管理・収益・通帳・印鑑・賃料受領が元の所有者のままだと、名義財産と見られるリスクがあります。
不動産贈与で発生する費用
贈与税
評価額が大きい不動産では高額になりやすい税金です。
不動産取得税
相続では原則かからない一方、贈与では受贈者に課税されることがあります。
登録免許税
所有権移転登記に必要です。贈与は相続登記より負担が大きくなる場合があります。
司法書士費用
贈与契約書、登記原因証明情報、所有権移転登記の実務費用が発生します。
固定資産税・都市計画税
贈与後の納税者・管理者・実質負担者を明確にします。
税理士費用
評価、申告、相続税との比較、特例判定が必要な場合に発生します。
贈与・相続・売却・家族信託・遺言の比較
贈与
生前に渡せる一方、税金・登記費用・家族間公平に注意。
相続
税務上有利な場合もありますが、遺産分割対策が必要。
売却
現金化により分けやすくなります。透明性ある販売方法が重要。
家族信託
認知症対策・管理承継に向く場合があります。
遺言
死亡後の分配意思を明確化できます。遺留分・納税資金に注意。
よくある危険な誤解
110万円以内なら絶対安全
相続前加算や名義実態の問題があります。
名義を変えれば終わり
管理・収益・税負担・意思確認が伴わなければ問題化します。
税金が安ければ贈与すべき
親の生活資金、将来売却、家族関係まで見る必要があります。
共有にすれば公平
共有は売却・修繕・賃貸管理で意思決定が止まる危険があります。
不動産は簡単に分けられる
不動産は現金より分けにくく、評価差も出やすい資産です。
2026年度・今後の改正動向
事業承継税制の期限延長動向
非上場株式等・個人事業用資産の納税猶予制度について、期限延長や制度見直しが議論されています。
形式的節税から実体ある承継へ
今後は、名義だけの移転ではなく、管理・収益・意思決定・家族合意まで整った承継設計が重要になります。
不動産評価の見直し動向
貸付用不動産、不動産小口化商品、法人活用などは、評価・実態・節税目的性の確認がより重要です。
物件所有者の確認チェックリスト
- 誰に、何を、なぜ今渡すのか
- 贈与税・取得税・登録免許税を試算したか
- 相続開始前7年加算を考慮したか
- 相続時精算課税を選ぶ理由は明確か
- 親の生活資金・介護資金は残るか
- 他の相続人は納得しているか
- 遺留分侵害の可能性はないか
- 将来売却する可能性を検討したか
- 賃料・敷金・契約承継を整理したか
- 税理士・司法書士・不動産実務者に確認したか
まとめ
不動産贈与は、節税だけで判断すると危険です。家族、税金、登記、管理、収益、将来売却まで含めて設計する必要があります。
ご先祖様から受け継いだ資産を、争いなく、誠実に次世代へ承継するために、贈与・相続・売却・家族信託・遺言を比較して判断することが大切です。