不動産売却時
譲渡所得税
完全ガイド
不動産売却は、売却価格だけで判断すると危険です。取得費・譲渡費用・所有期間・特例・申告期限により、税額と手残りは大きく変わります。
売却益が出ると、譲渡所得税・住民税・復興特別所得税が発生する可能性があります
特に取得費不明、短期売却、収益不動産、相続不動産では、想定以上に課税譲渡所得が大きくなる場合があります。
特例を正しく使えば、税負担を大きく抑えられる可能性があります
ただし、特例は併用可否・期限・相手方・居住実態・添付書類が厳格です。売却前の整理が重要です。
1. 譲渡所得税とは
譲渡所得税とは、土地・建物・マンションなどを売却して生じた利益に対して課税される所得税です。不動産の譲渡所得は、給与所得などとは分けて税額を計算する分離課税が基本です。
買主様から受け取る売買代金です。固定資産税等の精算金など、収入金額に含めるべきものがないかも確認します。
購入代金、建築代金、購入時仲介手数料、設備費、改良費などです。建物は所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。
売却するために直接かかった費用です。仲介手数料、測量費、印紙代、立退料、売却のための解体費などが代表例です。
マイホーム3,000万円控除、相続空き家3,000万円控除、低未利用土地等100万円控除、収用等5,000万円控除などがあります。
2. 所有期間による
税率の違い
所有期間は「売却した年の1月1日現在」で判定します。購入日から売却日までの実日数だけで判断しない点が重要です。
所有期間5年以下
住民税9%
所得税額に復興特別所得税が加算されます。短期売却は税負担が非常に重く、手残りを大きく圧迫します。
注意すべきケース
- 購入後すぐに転勤・離婚・資金事情で売却する
- 投資用物件を短期で売却する
- 贈与取得で取得時期の確認が不十分
所有期間5年超
住民税5%
短期譲渡より税率が低くなります。売却時期を少し調整するだけで長期扱いになる場合があるため、売却年の1月1日基準を確認します。
確認すべき資料
- 購入時売買契約書
- 引渡書類・登記事項証明書
- 相続・贈与の場合の取得時期資料
居住用財産で10年超
マイホーム3,000万円控除後も課税所得が残る場合、税負担をさらに抑えられる可能性があります。
注意
- 買換え特例など一部制度とは併用できません
- 親子・夫婦など特別関係者への売却は対象外になり得ます
- 住宅ローン控除との関係も確認が必要です
3. 取得費
取得費に含まれやすいもの
- 土地・建物の購入代金、建築代金
- 購入時の仲介手数料
- 登録免許税、不動産取得税、司法書士報酬など取得時費用
- 造成費、測量費、改良費、設備費
- 借地権の取得対価、更新料等で資産性のあるもの
- 購入後の増改築費、資本的支出
取得費に入れる際に注意するもの
- 修繕費か資本的支出かの区分
- 土地建物一括購入時の土地・建物按分
- 建物の減価償却費相当額
- 相続・贈与で取得した場合の取得費・取得時期の引継ぎ
- 領収書がない古い支出の立証
取得費不明時の概算取得費5%
取得費が分からない場合、売却価格の5%相当額を取得費とする可能性があります。
3,000万円で売却した場合、概算取得費は150万円です。実際には高額で購入していても、資料がなければ課税所得が大きく出るおそれがあります。
建物の減価償却と未償却残高
建物は使用や時間経過により価値が減少すると考えるため、購入代金・建築代金をそのまま取得費にできません。所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額が、建物取得費の中心になります。
収益不動産は特に注意
- 過去に減価償却を多く計上している
- 帳簿価額が小さい
- 修繕費と資本的支出が混在している
- 個人・法人で計算構造が異なる
4. 譲渡費用
譲渡費用は、売却するために直接かかった費用かどうかで判断します。単なる維持管理費や生活上の支出は含まれにくい点が重要です。
譲渡費用に含まれやすいもの
- 売却時仲介手数料
- 売買契約書の印紙代
- 売却のための測量費・境界確定費
- 売却条件として必要な建物解体費
- 借家人・占有者への立退料
- より有利な条件で売るため、既存売買契約を解除した違約金等
- 売却に直接必要な広告費・鑑定費等
譲渡費用に含まれにくいもの
- 固定資産税・都市計画税そのもの
- 通常の修繕費・維持管理費
- 引越費用・仮住まい費用
- ローン返済元本・金利
- 売却と直接関係しないリフォーム費
- 相続登記費用のうち取得費・譲渡費用の判定が必要なもの
- 税理士報酬のうち申告作成に係るもの
5. 控除・特例
特例は「使えるか」だけでなく、他の特例とどちらが有利か、併用できるか、将来の税負担に影響するかまで確認します。
マイホーム3,000万円特別控除
居住用財産を売却した場合、所有期間の長短に関係なく、最高3,000万円を譲渡所得から控除できる可能性があります。
適用される可能性があるケース
- 現に自分が住んでいる家屋を売却
- 住まなくなった日から一定期間内に売却
- 家屋を取り壊した後、一定期間内に敷地を売却
- 単身赴任などでも生活の本拠性を説明できる
適用されない・注意すべきケース
- 別荘・セカンドハウス・投資用物件
- 親子・夫婦など特別関係者への売却
- 特例目的の一時的入居
- 過去の居住用特例利用との制限
- 住宅ローン控除との選択・制限
10年超所有軽減税率
10年超所有のマイホームを売却した場合、3,000万円控除後の課税長期譲渡所得の一定部分に軽減税率を使える可能性があります。
適用される可能性があるケース
- 売却年1月1日時点で所有期間10年超
- 居住用財産としての実態がある
- 3,000万円控除後も課税所得が残る
適用されない・注意すべきケース
- 所有期間10年以下
- 買換え特例を選択する場合
- 特別関係者への売却
- 住宅ローン控除との関係
居住用財産の買換え特例
一定のマイホームを売却して新しいマイホームへ買い換える場合、課税を将来へ繰り延べられる可能性があります。免税ではありません。
適用される可能性があるケース
- 居住期間10年以上
- 売却年1月1日時点で家屋・敷地とも所有期間10年超
- 国内のマイホームから国内のマイホームへ買換え
- 売却価額・買換資産・居住開始期限の要件を満たす
適用されない・注意すべきケース
- 3,000万円控除・軽減税率と比較して不利になる場合
- 買換資産の床面積等の要件を満たさない
- 期限内に取得・居住できない
- 将来売却時に繰り延べた譲渡益が影響
相続空き家3,000万円特別控除
被相続人の居住用家屋や敷地を相続し、一定要件で売却した場合、最高3,000万円控除できる可能性があります。相続人が3人以上の場合は控除上限に注意します。
適用される可能性があるケース
- 被相続人が主として一人で居住していた家屋
- 昭和56年5月31日以前建築の家屋
- 耐震基準を満たして売却、または解体後に敷地を売却
- 相続開始後、一定期限内に譲渡
- 譲渡価額が制度上の上限以下
適用されない・注意すべきケース
- 区分所有マンション
- 相続後に賃貸・事業・居住に使用
- 被相続人が老人ホーム入所中で追加要件を満たさない
- 取得費加算との選択関係
- 必要な確認書・証明書を取得できない
相続税の取得費加算の特例
相続税を納めた相続人が、相続した不動産を一定期間内に売却する場合、相続税額の一部を取得費へ加算できる可能性があります。
適用される可能性があるケース
- 相続または遺贈で取得
- その相続について相続税を納付
- 相続税申告期限の翌日から一定期間内に譲渡
- 相続税申告書・財産明細がある
適用されない・注意すべきケース
- 相続税が発生していない
- 売却期限を過ぎた
- 相続空き家特例との比較が必要
- 共有者ごとに納税額・加算額が異なる
低未利用土地等100万円特別控除
一定の低未利用土地等を譲渡した場合、長期譲渡所得から最高100万円を控除できる可能性があります。
適用される可能性があるケース
- 都市計画区域内の低未利用土地等
- 売却年1月1日時点で所有期間5年超
- 親子・夫婦など特別関係者への売却ではない
- 譲渡価額が500万円以下、一定区域では800万円以下
- 市区町村長の低未利用土地等確認書を取得
適用されない・注意すべきケース
- 短期所有
- 特別関係者への売却
- 低未利用と認められない
- 売却価額上限を超える
- 他の一定特例を適用する譲渡
収用等5,000万円特別控除
公共事業などのために土地建物を譲渡する場合、5,000万円特別控除を検討できることがあります。
適用される可能性があるケース
- 公共事業に伴う収用・買取り
- 所定の証明書類がある
- 期限内に譲渡・申告する
注意点
- 通常の任意売却とは異なります
- 代替資産取得特例との選択が必要な場合があります
特定土地区画整理事業等2,000万円控除
特定土地区画整理事業などのために土地を譲渡する場合、2,000万円控除の対象となる可能性があります。
注意点
- 事業の種類・買取主体・証明書類の確認が必要
- 一般売却では通常対象になりません
特定住宅地造成事業等1,500万円控除
特定住宅地造成事業などのために土地を譲渡する場合、1,500万円控除を検討できる場合があります。
注意点
- 開発事業の内容と法令上の該当性確認が必要
- 証明書類が重要です
平成21年・平成22年取得土地等1,000万円控除
平成21年または平成22年に取得した国内土地等を一定期間後に譲渡した場合、1,000万円控除を検討できる可能性があります。
注意点
- 取得時期が限定されています
- 親族等からの取得は対象外となる場合があります
- 他の特例との関係確認が必要です
農地保有合理化等800万円控除
農地保有の合理化などのために農地を譲渡する場合、800万円控除の対象となる可能性があります。
注意点
- 農地法・農業委員会・譲渡先要件の確認が必要
- 宅地や一般土地売却とは異なります
特別控除の合計上限
土地建物の譲渡所得に係る特別控除は、特例ごとの譲渡益を限度とし、一定の場合を除き、その年全体で合計5,000万円が限度となります。
複数特例が関係する場合は、適用順序・併用可否・控除限度の確認が必要です。
6.注意すべきケース
税金が発生しやすいケース
- 取得費が不明
- 短期譲渡
- 収益不動産で減価償却済み
- 相続不動産で購入資料がない
- 共有名義で各人の条件が違う
- 居住実態が曖昧
- 過去に特例を利用済み
- 売却価格が大きく、控除後も所得が残る
売却前に確認したい資料
- 購入時売買契約書・領収書
- 建築請負契約書・増改築資料
- 売却時費用の見積書・領収書
- 相続税申告書・遺産分割協議書
- 住民票・戸籍・居住実態資料
- 固定資産税通知書・登記事項証明書
- 賃貸借契約書・減価償却明細
7. 申告期限と納税の注意
譲渡所得の申告期限
不動産を譲渡した年の翌年、原則として2月16日から3月15日までに確定申告を行います。還付申告となる場合は2月15日以前でも申告できる場合があります。
譲渡日は
原則「引渡日」
譲渡日は原則として買主へ引き渡した日ですが、契約効力発生日で申告することもあります。売却年が変わる場合は特に重要です。
8. 税理士への相談
推奨ケース
譲渡所得税が発生する可能性がある場合、税理士への相談を推奨します。
- 売却益が大きい
- 取得費が不明
- 相続税を納税している
- 空き家特例と取得費加算の選択が必要
- 共有名義・二世帯住宅・店舗併用住宅
- 収益不動産・法人所有・事業用資産
- 買換え・住宅ローン控除・軽減税率の関係がある
- 税務署へ提出する証明書類が多い
不動産売却前に
税金と手残りを
確認しましょう
売却価格・取得費・譲渡費用・控除・ローン残債を整理することで、売却後の手残りが見えやすくなります。
不動産売却のご相談はこちら本ページは一般的な解説です。最終的な税務判断は、必ず税理士・所轄税務署等へご確認ください。